2019年1月11日金曜日

「JR日高本線の再生を求める緊急声明」を発表しました

皆さま、こんにちは。JR日高線を守る会の村井です。 

JR日高本線が運休4年を迎えるにあたり、本日、新ひだか町のエクリプスホテルにて記者会見を行い、下記の通り緊急声明を発表いたしました。また、終了後にピュアプラザ前にて街頭宣伝を行いました。ご参集いただいた皆さま、寒い中大変ご苦労様でございました。ありがとうございます。

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 JR日高本線の再生を求める緊急声明  

JR日高本線の高波被災による運休から4年目を迎えるに当たり、以下の通り声明を発表いたします。 

一.バス転換はバラ色ではない
 「地元負担を考えればバス転換しかない」という声ばかりを聞きますが、国鉄末期に長大鉄道路線をバスに転換した地域では、転換バスが細切れの運行となった結果、乗客は何度も乗り換えを強いられるようになり、地域社会が丸ごと衰退しています。 速達性と定時制に優れ、長距離輸送に適した鉄道、小規模できめ細かな輸送に向くバスなど、交通機関にはそれぞれの役割があります。鉄道の役割をバスで代行することはそもそも無理なのです。 バス業界は今、車両もドライバーも不足し、乗客がいるのに減便せざるを得ない状況にあります。バス転換派がバラ色の未来のように宣伝するAI(人工知能)や自動運転は、実用化できるかどうかか不確定の段階であり、そのような不確実な新技術に未来を委ねることはできません。私たちに今、最も必要なのは、地に足の着いた公共交通の議論です。  車両やドライバーを確保できるのか、運賃の値上がりや所要時間が延びることはないのか、車椅子の身障者が不便を強いられることがないのかなど心配は尽きず、バス転換後に明るい未来が描けるような具体的な情報も提供されていません。現時点でも、ペガサス号の減便やバス停の減少、新千歳空港直行便のルートカットなど、既に利便性の低下が始まっており、通院に困っている方々が出ています。天北線や池北線(ふるさと銀河線)など道内でバス転換した長大路線では、いずれも乗客が減少し、地域公共交通の衰退に喘いでいる例が少なくありません。このような状況で、根拠も示さず「とにかくバス転換しろ」と言うのは交通弱者の困難を配慮しない主張であり、この段階でのバス転換を受け入れることはできません。

 二.説明責任を果たして情報公開を
  日高線の議論において最も大切なことは、「スピード感」ではなくて、「住民が真に安心して利用できる公共交通か否か」ということではないでしょうか。公共交通を利用する住民自身が、その内容を十分に検証できるように、日高線をめぐる会議や協議の内容・発言・資料等の情報を、行政が公開し、住民への説明責任を果たすことを求めます。 

三.国が責任を果たすべき
  そもそも今日のJR北海道の維持困難路線の問題は、「地方の問題」ではなく、JR北海道の経営危機の問題であり、32年前の国鉄分割民営化に端を発する国の政策の失敗によるものです。即ち、経営安定基金の運用益で赤字経営を補うという分割民営化時のスキームが破たんし、運用益の不足額が4600億円にものぼり経営を圧迫したことが、今日の問題の本質です。国鉄改革関連法案が成立した際の国会で「国及び各旅客鉄道株式会社は、経営の安定と活性化に努めることにより、収支の改善を図り、地域鉄道網を健全に保全し、利用者サービスの向上、運賃及び料金の適正な水準維持に努めるとともに、輸送の安全確保のため万全を期すること」「輸送の安全の確保及び災害の防止のための施設の整備・維持、水害・雪害等による災害復旧に必要な資金の確保について特別の配慮を行うこと」とする附帯決議が行われ、国もこの決議を尊重することを表明しています。 国の政策の失敗は、国が責任を取るべきであり、こうした歴史的経緯を考えても、地方の路線を廃止して「解決したことにする」べきものではありません。日本全体における北海道の果たす役割と鉄道の公共性に鑑み、国が責任を持って新たなスキームを構築すること、被災していない日高門別までの区間で速やかに運行を再開することを求めます。

 四.今こそ「公共交通」の再考を ~鉄道復権に向かう世界
  世界では、いったん民営化された公共サービスの再公有化の流れにあります。ヨーロッパでは鉄道の連邦政府や地方政府による運営は当然で、公共交通の運賃無料化に踏み切る国や都市の例さえ出てきています。公共サービスを企業が担い、赤字だと公的責任を放り出して撤退するのが当然とされる日本は今や世界から周回どころか数十周も遅れています。  欧州など世界各国の先進的な鉄道政策に倣い、日本も今ある鉄路を有効活用して、地方と中央との人・モノの移動をより活発にすることにより、一極集中と過疎を同時に緩和することができます。地方の鉄道は、どこも美しい景観と田舎の叙情とを併せ持つ地域の宝=国民の財産であり、地方は一次産業と国土保全の最前線であります。地方の鉄道をめぐる論議は、短期的には廃止の方向に見えても、長期的には世界の趨勢に戻る日が来ざるを得ないでしょう。日高のみならず、北海道、日本全体のためにも、JR北海道の問題は、「公共」とは何かを問い直す機会でもあります。公共交通は私たちの生命を保障するものであり、廃止は生存権を失うことと同じです。私たちはみずからの命の問題として、今後も鉄路維持を訴え続けます。 

五.オール北海道で根本的解決への論議を
 鉄路の維持・再生は、札幌圏を含む北海道の将来を左右する全道民的な課題であり、また被災した鉄路の災害復旧は北海道だけでなく全国的な課題です。これらの問題を、地域ごと、路線ごとの問題ではなく、全道全国の鉄路維持、公共交通のあり方、私たちの交通権の問題ととらえ、原点に帰っての根本的解決への論議を呼びかけます。 

2019年 1月 9日
JR日高線を守る会