この度、「JR日高線を守る会」他計8団体が実施した「JR北海道のローカル線に関するアンケート」の結果を集計しました。
北海道選出の衆参議員および北海道議会議員計127名を対象にしたもので、36名からご回答をいただきました。
大変ご多忙の中ご協力頂いた連名団体、及びご回答頂いた議員各位には、心より厚く御礼申し上げます。
結果は下記の通りです。
1.アンケート実施概要
このアンケートは、下記の団体が2016年6月3日(金)付で北海道選出の衆参議員および道議会議員を対象に郵送にて実施したものです。
回答期限は同6月17日(金)とし、同封の返信封筒にて回答を求めたものです。
実施団体:
- JR日高線を守る会
- ふるさと銀河線沿線応援ネットワーク
- 三菱大夕張鉄道保存会
- 勝手に新十津川駅を守る会
- 新十津川活性化懇話会
- 一般社団法人北海道消費者協会
- 新ひだか消費者協会
- 北海道鉄道遺産ネットワーク
2.対象者と回収状況
北海道選出の衆参国会議員27名(道内に事務所がある方のみ)と北海道議会議員全100名(1名欠員)、計127名を対象に実施しました。
内、それぞれ11名と25名、計36名の回答をいただきました。
全体の回収率は28%です。国会議員、道議会議員ともに、与野党で回答率に大きな差が見られました。
内訳は表の通りです。
国会議員 | 回答者 | 対象者 | 回収率 |
自民党 | 5 | 14 | 35.7% |
民進党 | 4 | 7 | 57.1% |
公明党 | 0 | 3 | 0.0% |
共産党 | 2 | 2 | 100.0% |
無所属 | 0 | 1 | 0.0% |
小計 | 11 | 27 | 40.7% |
道議会 | 回答者 | 対象者 | |
自民党・道民会議 | 0 | 50 | 0.0% |
民進党・道民連合 | 11 | 26 | 42.3% |
北海道結志会 | 10 | 12 | 83.3% |
公明党 | 0 | 8 | 0.0% |
共産党 | 4 | 4 | 100.0% |
小計 | 25 | 100 | 25.0% |
合計 | 36 | 127 | 28.3% |
3.アンケート結果
【結果概要】
回答者は、北海道における鉄道の重要性を深く認識しており、とりわけ交通弱者を含む地域住民の足としての役割をほとんどの方が重要だとしました。
バスを代替手段とした場合の問題点としては、交通弱者へのしわ寄せの他に、定時性や冬季の移動機能の低下と認識する回答者が多くいました。
北海道の鉄道においては、幹線を含む全路線で赤字である点は全員が認識を共有していて、今後は全路線の維持、または、より利用しやすいサービスの拡充を図るべきとの意見が多数を占めました。
路線ごとに存廃を判断すべきと回答した方の判断基準としては、住民合意や代替交通の確保、老朽化した構造物等の状況、議論の前提としての北海道全体の交通ビジョンの構築などが挙げられました。
その他自由記述では、各議員のローカル線存続に対する大変な熱意が多数記されました。
地域にとって重要な鉄道を最低でも現状維持すべきとの声が多数をしめました。減便や各種サービスの廃止などで不便なため利用者が減っている現状を踏まえ、国の方針である地方創生や観光立国を実現していくためにも、むしろ増便やサービス向上すべきとの意見も少なくありませんでした。
そうした面からJR北海道の経営に対する批判的な見方もある一方、多大な老朽化施設を抱えて広域にまたがる北海道の鉄道網の維持は民間企業では難しいとする声が多数でした。
すでに各路線ごとに存廃を議論すべき状況ではなく、公共交通としての鉄道(特に北海道と四国)に対する国の関わり方も抜本的に再検討すべきとし、法律改正、特別措置法の制定や上下分離方式の導入などといった具体的な提言も複数みられました。
【データ集計】
アンケートは自由記述含む6問を設定して実施しました。各設問ごとの回答結果は下記の通りです。
Q1.北海道にとって、鉄路はどのような役割や意義を持っていると思いますか。当てはまると思うものにいくつでも〇をつけてください。(複数回答可)
▼「その他」の自由記述(重複意見は省略)
- 広域点在型の北海道は、地域・自治体間の移動及び輸送に鉄路は欠かせない重要な交通インフラであり、住民生活や産業の根幹をなすものと理解している。
- 駅は地域における中心核となっている。
- 地方のまちづくり、地域創生にとっても必要。
- 地域の維持・活性化のための中心的役割を担っている。
- 全ての項目に役割、意義があると思います。
Q2.鉄道ではなくバスを代替手段とすべきとの意見もありますが、バスに転換した場合の問題点として、当てはまると思うものにいくつでも◯をつけてください。(複数回答可)
▼「その他」の自由記述
- メリットもアンケートすべき
- 不便になり、より車に頼らなければならない→高齢ドライバーの増加
- 個々に様々な問題があると思います。それを政治としてお聞きするのが役割
Q3.「ローカル線は赤字だから廃止」との意見もありますが、道央圏や函館本線などの幹線も含む全路線が多額の赤字運営だということをご存知でしたか。
Q4.以上のことを踏まえて、北海道のローカル線は今後どうあるべきだと思いますか。もっとも近いものに◯をつけてください。
▼④の判断基準に関する自由記述(重複意見は省略)
- 現時点では判断しかねる
- 乗車率(住民ニーズ)、代替手段の有無、線路、施設の耐年度合
・住民合意、代替交通確保、地域振興策
- 北海道全体の交通ネットワークを形成した上で、路線ごとに判断
・それぞれに、地域選出の議員、北海道、関係市町村、JR北海道で話し合うことが大切
- 自治体の枠を超えた将来的な交通ビジョン
Q5.Q4でそうお答えになった理由は何ですか。ご自由にお書きください。(自由回答)
(重複意見は省略、一部抜粋)
・民間である以上、利益を出せなければ運営できない事も理解するが、公共的・社会福祉的な役割もある訳だから、料金、補助金等を検討し、全路線を守るべき。
・減便や路線の廃止により、利用者の減少が更に進み、悪循環に陥ることになる。増便やサービスの向上により新規需要を含む新しい展開も開けると思う。
・昭和62年国鉄民営化の際に、輸送密度が1日4000人以下の路線については、廃止または第三セクターへの移行で整理し、ほかに代替の交通機関がない場合には、存続を義務付けたが、その結果、構造的な赤字路線を多く抱えるJR北海道では保線や安全に対する十分な設備投資が行われず、事故が多発する要因の1つとなった。
地域ネットワークの維持や公共性と、民間会社としての赤字部門の縮小による経営健全化のバランスを考える必要があると考える。
・北海道は、豊かな自然環境、特徴ある景観、広大な農地、豊富な水産・森林資源等を強みとしていますが、その反面、自然環境の変化が厳しいことに加え、
① 人口減少が全国より10年先に進展
② 本州等とは距離感の異なる広域分散型社会
であるという課題(「北海道総合開発計画(平成28年3月29日閣議決定)」においても指摘)を抱えています。
このような状況の下、各地域は、加速する人口減少に歯止めをかけるため、観光振興策の策定などにより、地域の創生・活性化に向けて積極的に取り組んでいるところであり、交通インフラの根幹である鉄道は、地域住民(特に交通弱者である高齢者や通学生など)の日常生活や地域の創生・活性化対策には必要不可欠な存在であると思います。
・北海道において鉄路は生活や産業にとっても重要であることはQ1でお答えしたが、広大な面積、冬期間の厳しい気候に対応できるように、国鉄民営化時において、多額の運営費を投入し、株も100%国が保有している。
これは、地域性ゆえのリスクを国が理解している所以で有る。従って、線路維持は民間であるJR北海道のみに依存すべきではなく、国や道、関係自治体の理解と協力で最低でも現状を維持するように努力すべきと考えます。
・ローカル線は沿線住民にとって重要な公共交通であり、現状維持が望まれる。特に日高線のあり方は他路線への今後の判断に大きな影響を与えるはずだ。JR、沿線自治体、住民により、建設的な話し合いが求められており、その将来を注視している。
・根底にあるのは、先ず地方の人口減少(特に若年層)による住所の鉄路利用回数の減少があり、当然経営主体であるJR北海道の収益は減少し、採算性を失う。同時に、JR北海道が商業施設からの収益に依存し、本業である鉄道部門での赤字解消と人材育成、鉄道網の整備を怠って来たことが現状を招いた要因である。
民間のバスに限らず、自治体による地域生活インフラの確保等の視点も取り入れ、地域住民とりわけ交通弱者の不便解消に努めるべき。特に、通院通学に関してのセーフティネットは必須である。
・この間のJR北海道の路線廃止、減便などの一方的な経営効率化の言動は容認できるものではない。
・北海道の全体的な活性化になくてはならない交通機関である。農林水産物を始め観光立国北海道にとって、欠かす事の出来ないアイテムとなる。
・私が通勤で利用する登別←→札幌もSキップ廃止により、相当不便になりました。廃止の理由はJRの一方的な利便性向上ということで、利用者の声は全く反映されていないと感じました。
・(JRが民間企業である以上)交通弱者等、ローカル線の存続が不可欠な方々にとってふさわしい交通手段を確保するという前提に立ち、「バスへの転換とその維持に必要な総経費※<ローカル線の維持に必要な総経費(いずれも行政としての公的負担においてという意味)」という(基準というより)考え方を念頭に、利用者の方々、地域(自治体)一体でその負担問題も含め協議し、総合的に判断すべきと考えます。
・2016年3月にJR北海道が行ったダイヤ減便によって通学・通院・他都市への買い物の足が減少し、沿線住民から「唯一の移動の足がなくなっては暮らしが立ちいかない」との声があがりました。地域の安心や観光資源の活用のためにも、又食糧供給基地としての北海道の特性を生かすためにもサービスの拡充につとめて鉄道の役割の評価を高めていくことが大事と考えます。
・地方の活性化のために、国の支援を強めて鉄道は残すことを基本とすべき。支援強化が望めない現状において、交通とまちづくりについてJR、行政、住民が十分に話し合って、その後のまちのあり方を展望していく。JRは、乗客増の策を積極的にうちだすべき。
・北海道の鉄路は、広大な地域の移動交通手段として必要。地方公共交通は国が責任をもつべきであり、老朽化し利用者が減少するからといって廃止していくものではないと考えます。移動人口を鉄路の利用によりカバーする施策が必要です。
・沿線住民にとってローカル線は重要な公共交通です。今まで道内では廃線によっていくつもの自治体が残念ながら経済の停滞、人口流出など衰退の一途を辿ってしまっています。これ以上、同様の自治体、地域を増やしてはなりません。
今やるべきことは、JR北海道と沿線自治体や住民らによるローカル線の維持存続に向けた建設的な話し合いだと思います。
・JRの経営状況や車両保有台数などを考えると、増便は困難といえます。しかし、これまで道内では廃線によって多くの自治体が活気を失い、地域の疲弊を招き、人口減少の一途を辿ってしまっていることからも、現状の維持・存続は最低限不可欠です。
また、えりもまでの交通網は、幹線道路一本であり、災害時における対応も考慮しなければならないと考えます。
・人口減少の歯止め策に道をはじめとする道内自治体が取り組んでいる。これ以上の路線の廃止は鉄道網というインフラネットの機能が果たせず、道内経済にとってもマイナスである。
・段階的な減便の中で、先ずは自ら身を切り、利用者と詳しく利便性の上でどこが問題か話し合いをして欲しい。道が特別補助協力も充分検討し、弱者に前向きになることも必要と思います。
・病院や学校が統廃合される中、通院や通学の為にも鉄路は重要である。
・JR北海道の経営を立て直し、安全運行の徹底を図る。北海道内全ての路線に置いて、経年劣化、老朽化が進み、安全運行のための投資額が課題である。
Q6.その他北海道の鉄路について、ご自由にお書きください。(自由回答)
・人口減少に歯止めがかからず、新幹線の延伸議論もある中、当面地方交通線沿線住民には距離のある話で、身近な線路を維持する事を真剣に考えるべき。
・線路から下の路盤・鉄橋・トンネルなどの基盤整備は広大な北海道においては国がやるべきと思う。(国道・空港・港湾と同様に)北海道と四国は上下分離をすべきであると考えます。日高線の早期修復と開通のためにもそうすべきです。
・民主党政権時代につくり上げた「交通政策基本法」の理念である、様々な交通機関を総合的に多様に組み合わせて活用し、地域住民の利便性や交通弱者の移動手段を確保していく道も検討すべき。
BRT(バスを基盤とする大量輸送システム)や路面電車による次世代型システムLRT、コミュニティバスやディマンドバスなど、全国での先進事例も研究し、冬季の北海道のニーズを満たす形で導入する方法について、地域と一体となった研究会の設置などを進めてはいかがか。
・JR北海道は、橋梁、トンネル、護岸など北海道の鉄道開業期に構築された土木施設・構築物等が老朽化しており、これらの対策にも多額の費用が必要となっていると聞いております。
一方、北海道は、本州等とは距離感の異なる広域分散型社会であり、かつ、自然環境の変化が厳しく、そうした条件の下で、公共交通機関(ユニバーサルサービス)としての鉄道運営をJR北海道の経営努力だけで担わせるのには限界があると思います。
(国鉄の民営化に当たっては、国からJR3島(北海道、四国、九州)に対して特例措置が講じられていますが、北海道の場合、国鉄時代の老朽資産を多く保有するなど構造的問題を抱え、かつ少子高齢化や地方の過疎化が進む中では、更なる国の支援が必要であると思っています。)
その支援策の一つとして、国や道がインフラを保有(財産の移管)し、JR北海道が運行を担ういわゆる「上下分離方式」の導入を積極的に検討する時期にきていると思います。
・政府による基金取り崩し等の大規模な経営支援が必要だ。JRも政府へさらなる支援を求める検討をすべきでは。
・道内鉄路の将来の姿をしっかり示すべき。個別の路線の議論では解決しないのではないか?
・補足として、Q1の⑦地域のシンボル、歴史、文化の象徴という観点から見れば、当方の地元では南富良野町の駅舎が映画「鉄道員(ぽっぽや)」の舞台になっており、多くのファンが訪れるなど、文化観光資源となっている。このような事例では特別な保存措置が必要。
他方、上川管内において人口減少に歯止めをかけている「下川町」「東川町」「東神楽町」にはJRの駅は存在しないが、町政の工夫で「にぎわい」の維持に成功している。下川町は木質バイオマス、東川町と東神楽は旭川空港からの利便性と移住対策など。JR北海道を批判するだけでは解決困難な状況であるので、他のJR各社との連携に加え、国、道、市町村と民間交通事業者、住民がそれぞれの立場で知恵を出し合うことが、今できうる最大の努力であると考えます。
・JRの老朽化した構造物などは、JRだけでは改修困難。鉄路や国土の保全は、国や地方自治体も含めて改修・補強する仕組みづくりが必要ではないでしょうか。
・鉄路は地域の生命線です。
・JR北海道は、公共交通事業者としての自覚を持ち、地域住民に寄り添う姿勢を示すべき。また、鉄路を含む持続可能な交通ネットワーク形成の議論も着実に進めること。
・目先の利害を超え、未来の北海道とその住民にとっても、それぞれの地域とそこでの暮らしを守るために必要な交通手段を、誰の負担でどのように維持、活用、向上させていくか、という視点が欠かせないと思います。
・工夫次第でより良いサービスをより少ない負担で提供できる可能性を模索することも大切ではないでしょうか。
・北海道の鉄道建設の歴史は北海道開拓の歴史と重なります。鉄道を中心に町が形成され、駅舎が「まちの玄関」としての役割をになってきた自治体がたくさんあります。広大な地域で住民の足としての役割を果たすJR北海道には政府として追加支援又「地方創生」策と関連づけた支援が必要です。
経営分離ではなく、鉄道を公共交通体系全体の中に位置づけ、北海道の魅力発掘の要に使う。
・駅、高校、医療機関等は、地方生き残りと活性化に不可欠。定時制と安全性に優れる鉄道は、北海道の財産であり、住民福祉の支えである。炭鉱と共に発展した鉄道は、歴史とつながり自然、観光を生かすための資源と考える。
・日高線をはじめ、海岸線などの保全、安全対策を充分にとらずJRまかせにしてきたことに問題があります。国と道が財政措置含めて地方公共交通を維持する視点をもち、計画的整備を行うべきと考えます。
・国鉄分割・民営化を決定、実行したときの将来予測が現実とかけ離れ、全路線が赤字のJR北海道(新幹線も!!)は経営安定基金で赤字分を補填できる経営状況ではない。政府は基金取り崩しや財政出動による大規模な経営支援資金を投入すべきであるし、JR北海道も政府へさらなる支援の要請を検討すべきと考えます。
・積雪や広大という特徴をもつ北海道にとって鉄路による人・物の移動手段の確保は社会保障のようなものである。国・自治体・JRによる維持のための枠組みを検討・整備すべきである。
・分割民営化時の予測と現実が大きく乖離し、経営安定基金で赤字分を補填できる経営状況にはない。北海道特有の広大な地理的状況の中で路線維持のためには、国の積極的な支援が必要です。
また、観光立国を掲げる道としても、年々増加する観光客の移動手段として鉄道の整備に取り組む(支援)ことが必要と考えます。
・民営化後、採算性のみを追求した結果が、安全性やローカル線廃止につながっている。広大な道内で採算性に偏らず、社会資本(インフラ)の観点で政府も含めた資金調達が必要である。
・安全性や地域の交通手段の維持のために、JR北海道の努力が求められます。同時にJR北海道の自己努力の限界も明らかであり、全国的な鉄道網の維持・整備のあり方について抜本的な検討が必要と考えます。
・5月に衆議院国土交通委員会でJR北海道の問題を取り上げました。経営や安全の問題も含め、根底には国鉄の分割・民営化で引き起こされた矛盾があると指摘し、国に検証・総括を求めました。その結論が出る以前にも、国として公共交通網を維持する責任があると考えます。
・2年前に自家用車を処分し、公共交通での移動を旨としている。まず、利用者の増加が重要だ。鉄路には、観光資源としての魅力も強く感じている。先進地域の事例などもふまえて、鉄路の価値向上などについて努めたい。
・JR北海道とJR四国を対象として、法律改正をする必要がある。現状のまま、廃線反対を続けることは、JR北海道、北海道に大きな負担がかかる。当然沿線自治体の財政負担は避けなければならない。
ローカル線を残す為には、法律改正、特別措置法が必要です。結果を出すべく鋭意努力する。