JR日高線を守る会
最 終 声 明
皆さま、こんにちは。JR日高線を守る会の村井です。
JR日高本線、鵡川―様似間116kmの廃線が決まりました。2015年1月の高波で被災・運休して以来、災害復旧もなされぬまま5年半も放置された挙句の廃線決定です。この路線を作った先達、現在利用していた方々や国内外の日高線を愛する方々、そして未来の世代に対して、私たちの力及ばず、大変申し訳なく残念な思いでいっぱいです。
2015年の当初から私たちはこの問題について発言してきましたが、廃線に至る過程において、民主主義的な観点から問題が多々あったと言わざるを得ません。特に昨年2019年11月以降、日高町村会内部でバス転換が多数決で決められるようになって以降、私たちは町村会に対して住民への情報公開と説明責任を果たすことを求めてきましたが、それは十分には果たされませんでした。
地域公共交通を利用するのは地域住民です。町村会および町担当課の方には、今後、①バス転換を検討する協議体の中に、学識経験者や、利用者であるPTAや老人会、身体障がい者福祉協会、社会福祉協議会、自治会などの住民を参加させること、または、②先述の様々な層から積極的に広く意見を聴取すること、のいずれかを通じて、住民の声や専門家の検証を意思決定に反映することを求めます。
また、様々なことが決定してから単なる結果周知のために住民説明会を行うのではなく、最終決定の前に公開の住民説明会を複数回行い、利用者たる住民へ十分な説明責任を果たすことを求めます。
これらは一見迂遠に見えるかもしれませんが、検討段階から住民の参加を募ることで当事者意識を高め、地域公共交通に住民の声を反映することが、利用者を増加させる唯一の道だと思います。本州などで行われている地域公共交通会議は、住民参加型で原則公開ですが、率直で活発な意見交換が行われています。非公開でなければ率直で活発な議論ができない訳ではありません。利用者抜きで、行政だけで決めないで下さい。
残念ながら日高本線は廃止されてしまいますが、私たちは、鉄道が地域の重要な資源であり、次世代へ引き継いでいくべき公共財であるという思いに変わりはありません。
むしろ、人口減少と気候変動、この二つの観点から、これからの地域にとって、日本にとって、鉄道は必要不可欠な存在だと考えています。
人口減少に伴って、バス運転手やトラックドライバーの数も不足する中、旅客とともに荷物を運ぶ貨客混載も可能ではないでしょうか。また、世界的に気候変動への対応が求められる中、欧州ではより環境負荷の少ない鉄道の利用が促進され、世界的に鉄道復権の流れです。
地域住民の高齢化に伴って運転免許の返納問題もあり、より快適性の高いユニバーサルな公共交通が求められています。また、交流人口の増加を促進するためにも、より視認性が高く信頼性の高い公共交通として、鉄道が再評価されています。何より、地域の鉄道それ自体が観光資源である場合が少なくありません。
日本は、毎年大きな災害に見舞われる災害列島です。台風が来るたびに被災したローカル線が消えてゆくような貧しい社会で良いのでしょうか。鉄道は、地域の暮らしと文化を支える大切な資源であると同時に、国家が責任をもって維持すべき公共財であり社会的共通資本です。このコロナ禍で、これまでのような新自由主義的なやり方では限界だということが明らかになってきたのではないでしょうか。これ以上一本たりとも廃線を出してほしくありません。不採算路線や被災したローカル線を簡単に廃止とするのではなく、政治は、日本の鉄道網の維持と鉄道の災害復旧のための枠組作り等に本気で取り組んでほしいと思います。
最後に、これまで私たち守る会の活動を支援・応援して下さった全ての皆さまに、心から感謝いたします。地元のみならず遠くからもカンパして下さった方々、駅清掃や学習会に参加して下さった方々、切手を提供して下さったりSNSなどで暖かい言葉をかけて下さった方々、写真展に素晴らしい作品を寄せて下さった方々などなど、守る会には、全国から日高本線を大切に思う方々の暖かい志がたくさん集まりました。本当に素晴らしいことだったと思います。長い間支えて下さった皆さま、本当にありがとうございました。
JR日高線を守る会としての活動は、ここで一段落となりますが、これからも、私たちはそれぞれの場所から、地域のため、子どもたちのために、声を上げていきたいと思っています。またどこかでご一緒できる日まで、皆さまもどうぞお元気でお過ごしください。最後にもう一度、ありがとうございました!
2020年10月23日
JR日高線を守る会
代表幹事 村井 直美
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